動画内で記載したとおり、2021年6月1日 隔離生活13日目になり、感染症の疑いがほぼ無くなりましたので社会化への準備期間に入りました。
この日までのCocoの体調などを観察していました。
Cocoは猫風邪の症状は見られるのですが(くしゃみ・涙目)目やにに膿が無く、眼球にも膿が溜まらないので
症状は軽い。
そして、Cocoと対面する猫部屋の猫たちは、ワクチン接種を行い抗体を持っていますので猫風邪は問題なし。
他にもCocoに、食欲不振、高熱、だるさ、嘔吐、激しい下痢、鼻汁、脱水症状、ふらつきや頭の揺れなどパルボウィルスの症状が見られないので問題なし。
下痢も見られないので原虫も問題なしと判断しました。
後は、白血病と猫エイズです。
○ネコ白血病ウイルス(FeLV)について
唾液、分泌物、排泄物などからの猫同士の密接な接触によって感染します。
母猫からの垂直感染については、80%が流産するか出産後すぐに死亡し残りの20%だけが保菌猫になる
毛づくろいや食器、トイレの共有んどによる経鼻や経口による感染は、長期に渡る濃厚な感染が必要
咬傷は大量のウィルスが直接体内に入るため、非常に感染しやすい。
”FeLVは体外では非常に不安定であり、外気温では数分~数時間程度で感染力を失う。
また、太陽光線、紫外線、熱、水などに暴露されると容易に死滅し、次亜塩素酸ナトリウム、ホルマリン、アルコール、洗剤(界面活性剤)、アンモニア水などにより殺滅させることが可能である。”
東京大学 大学院 農学生命科学研究科 獣医内科 藤野泰人(Yasuhito Fujino)
・2006年にアメリカとカナダの18,000匹以上の猫を対象にした調査では、FeLV抗原陽性の猫は2.3%、FIV抗体陽性の猫は2.5%と報告されています
・2016年9月から2017年3月にかけて、抗原血症の指標として動物病院を訪れた猫の唾液中のFeLV RNAを検査したヨーロッパの研究では、全体の有病率は2.3%であった
○ネコ免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ FIV)について
ウイルスを含む唾液と猫エイズに感染した白血球を含む咬傷を介した感染です。
喧嘩の無い26匹の猫のうち、9匹の猫が猫エイズと診断、10年間の観察期間中に他の6匹の猫に感染が広がった。
2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines
AAFP:アメリカ家庭医学会 American Academy of Family Physicians
現在FIV感染症は、日本を含めたアジア各国、北米、南米、ヨーロッパ、オセアニアなど、世界各地で報告されている。感染率は各地域ならびに国ごと、あるいは検索時期によっても異なるが、全体的として約1割程度と言われている。日本においては、1987年に収集された猫の血液サンプルにおけるFIV陽性率は28.9%であったと報告され、その後1994年から1999年に17道府県で調査された猫におけるFIV陽性率は9.8%だったという結果が示されている。
全国47都道府県に位置する動物病院の協力を得て、2008年に最低週に1回は屋外に行く1,770頭の猫より採集された血液材料をもとに血清学的なFIVの蔓延状況を調査するとともに、サブタイプ別の分布についても分子生物学的に解析した。その結果、23.2%(410頭/1,770頭)の猫が血中抗FIV抗体陽性を示した。感染危険率は、成猫ならびに雄であること、さらに咬傷歴、何らかの臨床症状および既往歴を有する猫で有意に高かった
鹿児島大学臨床獣医学講座内科学分野 遠藤 泰之
上記の様に白血病・猫エイズは「濃厚」な接触が必要であり、白血病の保菌猫は一定数はいますが、発病すると死んでしまうので少ない。
今回は猫白血病の潜伏期間(完全隔離期間)4週間~ を待ってからですと、感受期[臨界期(2~7週齢)]を過ぎてしまうため、猫との社会化を優先し、検査結果が出たら共同生活をいたします。
感受期(臨界期)については、赤ちゃん猫の脳の発達に関係しますのでかなり説明が長くなりますので割愛します。
検査結果が出るまでは子猫部屋訪問、猫部屋訪問で、食べ物やトイレの共有をしない数時間程度の接触にする予定です。
【参考機関・文献】
猫白血病ウイルス感染症の病態に関する研究
猫感染症研究会 Aim of the Japanese Advisory Board on Feline Infectious Diseases (JABFID)
日本獣医師会雑誌 所有者不明の幼齢猫140頭における猫免疫不全ウイルス,猫白血病ウイルス及び猫コロナウイルスの感染状況
2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines
AAFP: American Association of Feline Practitioners